上沼緋佐子の泥釉七宝    上沼緋佐子


平成4年から共に歩んでまいりました 泥釉七宝作家 上沼緋佐子先生が
突然の事故により平成24年5月16日、ご他界されました。
たいへん残念なことであり、心よりご冥福をお祈りいたします。

陶器の釉薬を使う「泥釉七宝」は、桃山文化の侘び寂の時代に開花し
桂離宮や修学院離宮、門跡寺院の曼殊院などに残っている
釘隠し、襖(ふすま)の引き手、飾り刀剣の鍔(つば)等に使用されています。
高度な技術と大変な手間がかかるため、高価なものになり
明治期に中国等から入ってきた現在のメタル七宝(ガラスの釉薬を使用)
に押されて絶えてしまいました。
上沼緋佐子先生は、平成4年文化庁の「泥釉七宝再現プロジェクト」に関わり、試行錯誤の末
日本でただ一人、独自の泥釉七宝を完成されました。

平成21年には、比叡山延暦寺に「経箱一双」を奉納され
翌22年には国宝殿寺宝展に、国宝の経箱2種と同時展示されるという名誉を受けられました。

米国の有名な七宝コレクターである フレドリック・シュナイダー博士が、来日の折りに
上沼作品を数点収集され、それらは博士の著書に掲載されました。
また、日本と東洋美術史の専門家である パトリシア・グラハム博士も
論文の資料収集に再度来日されるなど、「泥釉七宝」が高く評価され、脚光を浴び
5月に予定されていた大阪高島屋展が新しい門出となる矢先の、悲しい出来事でした。

泥釉七宝の技法が、上沼緋佐子先生のような強い意志と情熱を持って取り組む人が現れるまで
また何十年と絶えてしまうことを、本当に残念に思います。

                        工美まつもと 松本隆夫




上沼緋佐子の作品

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        額「西王母」                          香合「湖水月華」


     
棗 「淡紅梅」                         棗 「熨斗目」 官休庵不徹斎宗匠御書付



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